氷の女王に口付けを
二回転
羽生さん
あっという間に合宿も終わって、荷物をまとめる。
ライバル達の動向を垣間見れて良かった。
帰ったらコーチに報告して、対策を打たないと。
嗚呼でも、四回転の解禁はないんだろうな。ジャンプよりも他のエレメンツの調整になるだろう。
思ったより荷造りが早く終わったので、折角だから一汗かいてから帰ろうかと思い立って、ホテルのすぐ近くにあるスケートリンクに向かった。
リンクに入ると、なにやらロビーで話し込んでいる人影が二つ見える。
あれは……美優と羽生さん?
テーブルを挟んで椅子に座りながら談笑をかわしている二人。
あんなとこでなに話してんだろ。まあいいや、久しぶりに三人で滑べろうか。
二人に近づこうとしたら、美優の指先に視線が奪われた。
右薬指にはめられている、シルバーリング。
真新しいそれは、自己主張をするかのように輝いている。