氷の女王に口付けを

凄く嬉しい。凄く嬉しいんだけど……。


「そのまま渡す?」


普通さ、なんかこう、小さくて可愛い入れ物にいれて渡すじゃん?


そのままってなんか、ちょっと困るかも。


不満をもらすと、タクちゃんの眉間に小さな皺が寄った。


せっかく買ってきたのに文句を言うな、だって。


まったく、タクちゃんは乙女心を分かってないな~。


まあ仕方ないか。女の子に告白されても、告白されていると気付かないほどの鈍感少年なんだもん。


タクちゃんにロマンチックな演出を望むだけ無駄ってことですね。うん。


「ウソウソ。本当に嬉しい」


だけど、この気持ちは本当だよ。


一方的な約束だったのに、律儀に守ってくれて。
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