氷の女王に口付けを
俺に構うなって言ってんのに。
嗚呼、クソッ!
「止めろ!」
美優の両腕を乱暴に払った。
目が点というのはこのことを表すのだろう。
今まで見たことがない美優の表情に良心が痛んだが、視線を外して小さく舌打ちした。
「ご、ごめん。タクちゃんが少しでもリラックス出来るようにって……」
「自分の心配より人の心配とは余裕だな。さすが世界選手権二連覇中の女王様。もはや女子フイギュアに敵なしってか?」
「そんなこと……!」
「事実だろ。なんなら明日のショート、俺の代わりに出てみたら? 四回転ループを跳べば優勝確実だぞ」
なに言ってんだ俺。なにしてんだ俺は。
こんなこと言いたくないのに。こんなこと本気で思ってないのに。