氷の女王に口付けを
タクは音を拾うことに関して優れている。これもおそらく大丈夫。
正直、演技構成点は実際に試合で滑らないとどう出るかわからない。
大会ごとに選手の調子もジャッジも違う。会場の雰囲気によっても点が左右される。
ましてタクは世界からしてみれば無名の選手。PCSも伸びづらいだろう。
だが今季は奴の調子もすこぶる順調だ。
不安要素はなかった。昨日の公式練習までは。
リンクには六人の選手が、最後の六分間練習を行っている。
GPSのショートは世界ランキングの下位の選手から滑走する。
タクは最終グールプの一番初め。
最初に滑る選手は、他の選手との比較のために点が抑えられる傾向がある。
高得点は望めないし、六分間練習が終わった直後に演技を始めるので、練習もあまりできない。
最悪な状況だが、逆に考えればタクがここで素晴らしい演技をすれば、後から滑る上位選手にプレッシャーを与えることができる。