氷の女王に口付けを

「いえ、問題ありません」


問題があるから聞いてるんだが。


これ以上話しても埒があかない。


変に集中を乱してもいけないので、演技に関してのアドバイスを一通り言った。


タクの名前が呼ばれる。


「行って来い」


軽く頷くと、タクはリンクの中央へ向かった。


会場の拍手に迎えられ中央に立つ。


ショートプログラム。サン=サーンス『死の舞踏』


タクのシーズンが始まった―――


リズムに乗って氷上を蹴る。


今までのタクにはなかった腕の緩急。
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