氷の女王に口付けを
俺、なんか気に障る事でも言ったのかな?
恐い顔のまま、大介はテレビに視線をやる。
そっか、大介は美優のことが―――
「もしかして、美優の応援に来たとか?」
「はぁ!? 馬鹿にすんな! 俺は調整しにきたんだ!」
「調整?」
「俺の新しいコーチがロシア人でな、こっちで調整しろとうるさいんだよ。設備がいいとかマスコミ対策とか言ってるけど、ただ自分が来日するのが面倒なくせに」
後半がグチになっているけど、確かに日本で調整するより外国で調整したほうが良いのはわかる。
ただでさえ日本のリンク事情は最悪で、練習場所が少ないからな。
だけど大介、新しいコーチを就けたんだ。知らなかった。
「そうなんだ。だけど同じホテルに泊まってるとは気付かなかったよ」
「俺もですよ。ショート一位の貴方がフリーでまさかの大失速。総合六位になるとは夢に思いませんでした」