氷の女王に口付けを
聞きなれない単語に疑問が浮かぶ。
大介は俺の隣に座ると、目線は逸らさず口にする。
「今期からシニアに上がってきたんだけど、ジュニアでは『当たり屋』というあだ名で呼ばれてたらしい。なんでも公式練習や六分間練習で、衝突ギリギリまで接近して妨害工作をするんだってよ」
腐った野郎だ。
最後に一言付け加えて、大介は舌打ちした。
「当たり屋って……そんなことしてもメリットなんてないだろ。それに下手したら自分だって怪我するし」
「三流のやることなんて、一流の俺に分かるわけないだろ。玉砕覚悟ってやつじゃないんすか? それとも、一流の当たり屋だから自分が怪我をしないような妨害工作でも心得てるんじゃないの」
「一流の当たり屋って……」
言葉が出なかった。
そんな人がいるなんて思いたくない。けど、大介の言うことが本当だったとしたら、
「悲しいな」