危険ナ香リ


 あんなこと、と言うのはもちろん。




「ふっ、ふし、ふしだらなこと、です」

「……舐めることか」




 なんだか自分で言って恥ずかしくなってしまい、うつむいた。




「先生は、ああやってみんなに優しくして……どうせその内、ふ、ふしだらなことするんだって思ったら、嫌になってきたんです」




 優しくするのは作戦なのかな。

 それとも“馴れている”が故の無意識的行動なのかな。




「だ、だから、あれはヤキモチなんかじゃなくて、嫌悪感?みたいなもので」




 うつむいたまま喋っていると、不意に、タバコのニオイを強く感じた。




「や、ちょ、先生!?」

「……誰にでもしてるわけじゃない」

「ん、せんせ」




 肩を掴まれて、首筋に生暖かくて湿った感触。


 ピクリと動くと、それを制するように肩に置かれた手に力が入る。




「俺は変態じゃないよ。清瀬」




 じゅ、充分変態だと思いますけど。


 そう思ったまま、佐久間先生の服を掴んだ。


 舐められている。それは分かる。

 この間のように息が浅くなる。それも分かる。


 だけど、なんでこんなに虚しくなるのか、分からなかった。




「や、やめてよ、先生」

「嫌悪感とか言うなよ。バカ」

「っ、耳やめ……っ」




 とことん攻められて、泣きそうになる。


 片目を開くと、テーブルの上にピンク色の紙袋が見えた。




 ……祐。




 そう名前を呼べば思い出すのは美咲ちゃんの顔だった。


 そしてさらに泣きたくなった。

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