危険ナ香リ
「……バカ。何泣いてんだよ」
どうやら本当に泣いてしまっていたようだ。
顔を離した佐久間先生があたしの涙を拭いて、ため息をはく。
「さ、さくま先生なんか、きらい」
ため息なんかはかないでよ、バカ。
しゃくりあげてからそう思うと、佐久間先生があたしの背中に両腕を回してきた。
ビックリして瞬きすらできなかった。
「……清瀬だけ、だから」
タバコのニオイを今までよりも強く感じる。
佐久間先生の力強さを、改めて感じる。
―――― なんで抱きしめられてるのか、分からなかった。
だけど。
肩越しに見えたピンク色の紙袋に、少しだけ罪悪感を感じたことは分かった。
……感じる必要なんかないのに、感じていたあたしは、正真正銘のバカだった。
「……離して、ください…」
罪悪感が、どんどん這い上がる。
堪えきれなくなって、小さな声で、そう言った。
それでも、佐久間先生は離してはくれなかった。
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