危険ナ香リ





「おい祐、向こうで話すぞ」

「え?なんで?柚乃の耳の心配か?」

「いや。柚乃はどーでもいい。白血病になろうが突然婆さんになろうが、俺は知らん顔をするに違いねぇ」




 あっ。柚乃ちゃんの頭から角が生えてきそうだ。


 飛鳥くんの口を止めようかな、と考えてみたけど、特に飛鳥くんと仲良しなわけじゃないから……どう止めればいいか分かんなくて、結局なにもしなかった。




「ぶっ殺」

「とりあえずあっち行くぞ。俺はあっちに行きたいんだ」

「バカあす」

「じゃあな。清瀬(きよせ)さん」

「言わせろボケぇえ!!」




 柚乃ちゃんの怒鳴り声を背中に、祐を押しながら教室の端、自分の席に向かう飛鳥くん。


 ちなみに、清瀬ってゆうのはあたしの名字で、このクラスのほとんどの人はあたしをそう呼んでいる。


 あたしを“恭子”って呼ぶのは、柚乃ちゃんと祐と、あとは中学から一緒の人達だけだ。


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