危険ナ香リ


 なぜそれが手作りだと分かったのかと言えば、塗りたくられたクリームのところどころからスポンジが見えていたからだ。


 あと、イチゴも少し曲がって並んでいた。




「あれ?どったの恭子?」




 固まったあたしを、2人が覗き込んでくる。


 視界の中に2人の顔が映った瞬間、






―――― あたしの目から滝のように涙が流れた。






「き、恭子?」

「うわああんっ」

「え?なに?ケーキ嫌いだったの?恭子ちゃんっ」




 ケーキは大好きだよっ!


 あたしが泣いてるのは、そんな意味じゃなくって。


 ひっく、としゃくりあげてから袖口で涙を拭う。




「だ、だって、わす、忘れられっ、てると思ってっ」




 ……悲しかったの。




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