危険ナ香リ






 2人お手製のケーキはとっても美味しかった。


 もっとコメントがうまかったら、いい言葉を言えるんだろうけど……あたしには美味しいとしか言葉が出てこなかった。


 だって、美味しいんだもん。




「敦もどーお?」

「要らん。甘いのは好きじゃない」




 そう言って、バルコニーでタバコを吸う佐久間先生。


 美波先輩は、特に何も言わずにまた戻って椅子に座った。




「さっすが恋人にしたい男ナンバーワン。月を背にタバコ吸う姿はなんと麗しいことやら」




 そう言って歓喜のため息をはいた柚乃ちゃんの言葉に、ちょっと疑問を感じた。




「恋人にしたい男?それってなぁに?」

「あ。そっか。恭子は後夜祭にいなかったもんね」




 今年の文化祭の話だとすぐに分かった。


 だってあたしは今年の後夜祭の時、1人で後片付けをしてたから。


 後夜祭なんて、特に楽しいと思える催しもなかったし、クラスの中身はぐしゃっとして汚かったから、思わず片付けに徹してた。




「あのね、今年は後夜祭で特別企画やったの。生徒全員が選ぶ“恋人にしたい男ベスト5”ってやつをね」




 へぇ。そんなことが……。


 ぱくりとイチゴを口にしながら、柚乃ちゃんの話に耳を傾ける。




「それで、佐久間先生ってばぶっちぎりの1位だったの!」




 ……理解できない……。


 なんであんな意地悪な人が1位なの?


 あたしだったら絶対票を入れてないよ。




「やっぱり、同年代にあんな大人の色気だしてる人なんていないもんねぇ。うーん。さすがさすが」




 ……色気?


 佐久間先生に色気?


 ……ますます理解できない……。


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