危険ナ香リ


 難しい顔をするあたしに、柚乃ちゃんは気づかない。


 だって、佐久間先生に熱視線を送ってるから。




「なぁにがそんなにいいのかしらね。あんな奴、色気なんかありゃしないわよ」




 美波先輩とおんなじ意見だったあたしは思わず頷きそうになった。




「えー!?ありますよっ!ほら、あのチラリと覗く肌とかから」

「あんなの、ワイシャツのボタン外せばいくらでも見える範囲じゃないの」

「それでも佐久間先生からは色気が流れてるんです」

「流れ去っていってるの間違いよ」




 熱い討論を聞きながら、チラリとバルコニーにいる佐久間先生に目をやる。


 手すりに腕をおいて、タバコを吸っている姿には色気なんか感じない。


 そう思っていると、ふと佐久間先生がこっちを見てきて、目が合った。


 ドキッとしていると、先生は口元を緩ませて微笑んだ。


 ……色気は分からないけど、顔はかっこいいってことは分かった。




「だって結構筋肉あるんでしょう?あの人」

「ああ。あるわね。たまに風呂上がり上半身裸でくることがあるんだけど、あいつ腹割れてるわよ」



 な、なんの話に発展してるんですか、2人共……。


 ちょっとだけ顔を赤くして、佐久間先生から目を逸らしてケーキを食べた。


 2人の熱いトークはまだまだ発展していきそうだった。


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