危険ナ香リ
「いくぞ清瀬」
「え!?ええ!?」
いきなりこっちを向いたと思ったら、すぐに近づいてあたしの腕を掴む。
戸惑うあたしに気をつかわずに、佐久間先生はスタスタとリビングから出て行ってしまった。
もちろん、あたしを連れて。
「さ、佐久間先生!」
パタンっ、と玄関のドアが閉められるよりも早く風の冷たさを感じる。
だけど掴まれてる部分は暖かい。
「2人っきりにして欲しいんだとさ」
「え?」
「いくぞ」
2人っきり……って、なんで?
どうして佐久間先生は美波先輩が言ってもいないことを感じ取っているの?
色々、聞きたいことがある。
……なんで、抱き締めたの?
今はもう関係ないであろう話題を掘り返してしまうのは、……佐久間先生と2人っきりだから。
意識せずにはいられない。
ねぇ先生。
こんなに意識してるのは、また、あたしだけなのかな……。
「プレゼント」
「え?」
「何がほしい?」
気づけば車の中にいた。
佐久間先生の横顔は、あたしを意識しているようには見えなかった。
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