危険ナ香リ
コンビニの中にはほんの2・3人程度の人しかいなかった。
カゴを片手にアイスを選ぶ佐久間先生の横顔を、こっそり盗み見る。
……さっきの声は、気持ちが見えない声だった。
いや。そう思ってるのはあたしだけで、ただ低いだけの声だったかもしれない。
だけどあたしはそう感じた。
どうしてそう感じたのかはわからない。
……もしかしたらそれは直感かもしれない。
「……先生」
アイスをカゴに入れて、歩く佐久間先生の背中に小さく声を投げかけた。
繋げる言葉なんか決まってないけど、なんとなく口から声が飛び出した。
「外で2人の時はそう呼ぶな。変に思われたらどうする」
あたしの小さな声は確かに佐久間先生に聞こえていたらしい。
そして、あたしにも、佐久間先生の小さな声が聞こえた。
……そっか。
こんな時間に、“先生”と制服を着たあたしが2人でいたら、変に思われちゃうよね。
「ごめんなさい……」
「いや。いい。……あ。清瀬清瀬。いいもん見つけた」
「え?……ぎゃあ!」
「幼なじみのベッドの下探したら出てくるぞ」
「ちょ、ぎゃっ!な、中身見せないでくださいよぉ!」
な、なんてことだ!
こんな人とあたしが“そうゆう”関係だと思われたくない!
顔を真っ赤にしているあたしを見て笑う佐久間先生を見て、本気でこの人は嫌いだと思った。
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