危険ナ香リ


 それから、少しの間あたしで遊んで、缶コーヒーとジュースをカゴに入れて、レジまでいったらタバコを買った佐久間先生。


 レジで会計をする佐久間先生から離れたところ、お菓子コーナーに非難するあたしはその背中を睨みつけていた。


 それを見た佐久間先生は思いっきり笑っていた。


 だから思いっきり眉を寄せてやると、さらに笑われた。




 店員さんは本当にこんなあたし達を“そうゆう”関係だと思って見ているんだろうか。


 だとしたら、眼科にいったほうがいいと思う。




「あー。やっぱり清瀬は面白いな」

「もう知りませんっ。先生なんか、大っ嫌い!」

「それ以外と傷つくから言うなよ」




 車に乗り込んで、缶コーヒーのふたを開けた佐久間先生。


 エンジンをかけてはいるけれど、発進する様子はない。

 現にシートベルトをしめてはしなかった。




「はいこれ。誕生日プレゼント」




 そう言って渡されたのは、さっき佐久間先生が買っていたジュースだった。


 ……美波先輩の分だと思ってたのに。




「飲んでもいいんですか?」

「だから誕生日プレゼントだって言っただろ。ってゆうか、そんなもんがプレゼントなことに文句はないのか?」

「だって佐久間先生ならこんなプレゼントしそうだし……」

「俺はどれだけ非情な人間に見えてんだよ」




 苦笑いをする様子を見て、少し失礼なこと言っちゃったかな、と後悔した。


 だから一言謝ろうかと思ったら、先に口を開かれてしまった。




「生徒にはなるべく優しくしてるつもりなんだけどな。もちろん、例外はなく清瀬にも」




 “例外はない”


 その言葉が少し引っかかった。




 ……それはつまり、あたしは、他の生徒と同じように見られてるってことだよね?




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