危険ナ香リ
“……誰にでもしてるわけじゃない”
そう言った佐久間先生の声が不意に頭の中に流れた。
佐久間先生にとって、あたしは他の人達と同じなのかな。
もちろん、恋人なんて関係を望んでるわけじゃない。断じてそんなんじゃない。
だけど、“生徒”の中でも、まだ話したこともない“生徒”と、けっこう親しい“生徒”がある。
あたしは、佐久間先生にとってどちら側の“生徒”に分類されるんだろう。
……できることなら、後者であってほしい。
他の生徒とは違う位置に立ちたい。
そう思うのはきっと、あたしを見て欲しいから。
「まあ、清瀬に対しては特別意地悪だけどな」
―――― “特別”なんて言葉が嬉しく思えた。
ねぇ。
佐久間先生は、少しでもあたしのこと見てくれてるって、思ってもいいかな。
「だってお前、いじりがいがあるから、つい絡んじまうんだよ」
「……いじりがいって」
「反応が面白いんだよ。見てて楽しい」
……あたしで遊んでたんですか、先生。
「あたしは佐久間先生のオモチャじゃありませんよっ」
「人間をオモチャだって思えるほど、俺は人の道外れてないと思ってるんだけどな。ところで清瀬」
「はい?」
「だいぶ前、家に連れて行った時あっただろ。その時、お礼する、とか言ってまだしてなかったよな」
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