危険ナ香リ
そう言われてみれば、そんな気がしないでもない。
思い出したあたしに佐久間先生は缶コーヒーを飲み干してから、口を開く。
「なにが欲しい?」
「え?」
「誕生日プレゼントも兼ねて、好きなもん買ってやるよ」
え?これが誕生日プレゼントなんじゃないの?
手の中にあるジュースを見ると、佐久間先生は吹き出した。
「そんな冗談、真に受けるなっての」
……あ。嘘だったってわけですか。
見抜けなかった自分が恥ずかしくて、少しだけ顔を赤くした。
「本当の誕生日プレゼントだよ。いっつも美波の世話してくれてるみたいだからな。特別に買ってやろう」
世話……って。
そんなまるで犬の世話みたいな言い方しないで欲しい。
それにあたし、美波先輩とはなにも……。
……あたしじゃなくて、柚乃ちゃんのほうが……。
目を伏せて黙り込んで、虚しさに似たこの気持ちに浸る。
「遠慮してんのか?」
「……はい」
とりあえずそうゆうことにしておこう。
だって、あたしの主観で美波先輩と柚乃ちゃんとのことを話したら、きっとあたしが可哀想な奴に聞こえる。
そうなったら、佐久間先生はきっと美波先輩とそのことを話すと思うんだ。
大事にはしたくない。
だから、佐久間先生の話の流れに合わせようと思う。
「遠慮するなよ。ほら、言え。エロ本が欲しいと言え」
「な!なんでそこでエ……!そ、そんな、ふっ、ふしだらな本なんか要りません!」
「そうか?なら、ふしだらなDVDを」
「要りませんー!!」
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