危険ナ香リ


 え?、と声を出して振り向くと、佐久間先生の手にはピンク色の紙袋がもたれていた。


 ああそういえば、忘れるところだった。




「すいません……」




 贈り主が判明していない、プレゼント。


 それを受け取って、感触を確かめる。


 そしたら、少しだけ落ち着いた。




「送ってくれてありがとうございました。じゃあ、また」




 そう告げると、佐久間先生は微笑んだ。




―――― 手首に掛けていた黒いミニバッグの存在に、ほとんど気づいていなかった。




 それに気づいたのは、部屋の中に入ってからだった。


 おかしいな。

 祐からのプレゼントなのに。


 ピンク色の紙袋と黒いミニバッグを揃えて机の上においた。




 お風呂にあがって、先に目についたのはピンク色の紙袋のほうだった。




 でもあたしは、2度目3度目にもなると、それを当たり前だと理解するようになっていた。


 その“当たり前”を寝る時には“おかしい”とは思わなくなった。


 布団に入って、目をつぶる前に目に入ったピンク色の紙袋を見て、“贈り主は誰なんだろう”と再び疑問を感じた。


 そして、今までよりも強く“贈り主を知りたい”と思った。


.
< 126 / 400 >

この作品をシェア

pagetop