危険ナ香リ
休み時間の間も、柚乃ちゃんはこっちを見なかった。
飛鳥くんが柚乃ちゃんを連れて、教室をでていって、戻ってきてからも、柚乃ちゃんはこっちを見なかった。
……昼休み。
柚乃ちゃんはあたしを避けるように、教室の外に出て行った。
「あら?柚乃は?」
いつものようにやってきた美波先輩にそう聞かれたあたしは、うつむきながら“出て行きました”と言った。
すると美波先輩は頬に手をあてて、しばらく黙っていた。
「恭子ちゃん。悪いんだけど、今日は敦のとこ行ってて」
「え?」
「ちょっと柚乃が心配で……。探してくるから、敦のとこでお弁当食べてて」
止める暇もなく、美波先輩はお弁当片手に走って行ってしまった。
……美波先輩は、あたしに、一緒にお弁当を食べてくれるクラスメートがいないって分かってるに違いない。
だから、佐久間先生のところに行けと言ったんだろう。
……つまりそれは。
あたしが1人になるよりも、柚乃ちゃんが1人になるほうが心配だということ。
美波先輩は、あたしより柚乃ちゃんを選んだとゆうことが、よく分かった。
1人でご飯を食べるなんて寂しいまねはできなくて、言われるがままに、保健室に向かった。
みんなが教室の中にいてご飯を食べているので、廊下はとても静かで寂しい空間だった。
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