危険ナ香リ




「……清瀬?」




 なにも言わずに保健室に入ったあたしに、佐久間先生はビックリした顔を見せた。




「……美波先輩が、今日はここで食べろって……」




 小さな声でそう言うと、佐久間先生は、ああなるほど、といいたげな顔をしてメガネをはずした。




「鍵閉めておいてくれるか」

「……なんでですか」

「途中で誰か入ってきたら、どうする?……だから閉めろ」




 それを聞いて、あたしは黙って鍵を閉めた。


 カシャン、という音が、あたしの気持ちをゆるませた。




「……清瀬」




 名前を呼ばれて、側にいく。


 ソファーには座らずに、佐久間先生の前に立った。




「……柚乃ちゃんに、嫌われちゃいました」




 なんで佐久間先生にこんなことを言い出したのか、自分でもよく分からない。


 でも、言わずにはいられなかった。




「でもあたし、なにしたか、自分でも分からないんです。柚乃ちゃんに嫌われるようなこと、しちゃった覚えなんてないんです」

「ん」

「……嫌われたくなかったのに、あたし、いっつも嫌われてばっかりで……」




 そこで言葉が止まった。


 泣きそうになってしまったから、止めた。


 ……毎回佐久間先生の前で泣いてしまってるから、また泣いたら、迷惑がられると思った。




「続けろ」




 タバコのニオイが強く香った気がした。




「どこが、いけなかったんですか。それともなにか足りなかったんですか。……どうすれば、嫌われないようになりますか」




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