危険ナ香リ
離れたのは、あたしからじゃなくて佐久間先生から。
立ち上がってあたしを抱きしめていた佐久間先生は、離れて顔を覗き込んできた。
「お前は本当、泣いてばっかりだな」
囁くようなその声と共に、涙をふき取られる。
……迷惑、だったかな。
少し心配になって、佐久間先生を見つめる。
佐久間先生はそんなあたしを見て、なにを思っているかすぐに分かったように、微笑んだ。
「大丈夫。俺は泣き虫は嫌いじゃない」
思わず、ホッと息をはいた。
「だけどお前はもう少し強くならなきゃな」
「それってどうゆう……」
「“嫌われたくない”のは分かった。だから嫌われないようにしてることも分かった。……そうやって、お前は守りにはいってるってことも分かった」
守り……?
よくわからなくて首を傾げると、佐久間先生は少し笑う。
「わかんないか。まあどうせ、無意識だろうしな」
「む?」
「例えば、嫌われるのが怖くてなに話していいか分からなくなったりしてないか?」
「……はい」
「そうゆう時、お前はなにも喋らないで相槌だけになるだろ」
「……あ」
「それが俺から言わせれば“守り”にはいってるように思える」
なんとなく、理解できた。
「ちょっとは攻めてみろよ。会話って大事なんだから、相槌だけじゃなくて自分から話振ったりしろよ」
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