危険ナ香リ
鏡を穴が開くんじゃないかと思われるぐらい、ジィッと見つめる。
そこにいるのは、確かにあたしで、でもなんだかあたしじゃないみたいで、おかしな気分だ。
少し離れて格好を確認すると、レースがついたピンク色のワンピースを着た自分がいた。
そのワンピースの上にフードつきのコートを羽織った姿を、また食い入るように見つめる。
「……着替えたい……っ」
そしてそのまま、しゃがみ込んだ。
あたしには似合わない。こんな甘い服、あたしには似合わない。
だってこんな不細工ネガティブ女がこんな可愛い服を着るなんて……世の中の女の人達全員に怒られる気がする。
……でも、もう着替える時間ないんだよなあ。
そう思うと、ため息しか出てこなかった。
ええい!女は度胸だっ!
「よしっ!頑張れ自分!」
そう叫んで立ち上がって、洗面所からでた。
リビングまで向かう途中、たまに、首もとに冷たい金属の感触を強く感じた。
―――― 首もとには、祐からもらった蝶のネックレスがついていた。
これは、お姉ちゃんに発見されてしまったのだ。
そして、“どうせならつけなさい”と言われてつけられた。
あたしも、せっかくだしつけたいなと思って黙ってつけられていたけれど……。
……この固い感触を感じる度に、なんだか祐を思い出してしまう。
そしてその度に、デートに行くことを躊躇ってしまう。
―――― 好きでもない人とデートなんて、いいのかな、と考えさせられてしまう。
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