危険ナ香リ
好きな人と、デートがしたいと思った。
だけどそれは無理だと知っているから、そんな願望は持たないように努めた。
「ところでさ、恭子」
「うん?」
「デートの相手って、もしかして祐?」
悪気もなくそう言ったお姉ちゃんに、あたしは目を泳がせた。
「そのネックレスも祐からもらったんでしょ?よかったじゃない」
「……」
「それにしても。ようやく、あいつの片想いが実ったのかー」
「……え?」
“片想い”って……。
飛鳥くんの言葉が頭に浮かんで、ドキッとした。
……で、でもあれは絶対嘘で、あたしは絶対信じないもん。
「いやぁ。見てるこっちからしたら歯がゆかったわよー。あんなに恭子のことが好きだって顔に書いてあるのに、恭子ったら気づきもしないんだもの」
……嘘、だもん。
信じないよ。あたしは絶対に、信じない。
だって信じちゃったら、あたし、
「恭子も恭子で祐が好きだったんだろうけど、気づいたの最近っぽいのよねー。まあ、中学辺りから薄々は自分の気持ちに気づいてたように、あたしは見えたけど」
「……」
「ってか、あれ?そういえば祐にはカノジョがいたんじゃ……」
―――― 泣きそうに、なる。
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