危険ナ香リ


 ……飛鳥くんに向かって言った言葉達を思い出した。


 あれらはすべて“もし”の話で……つまりあたしにとっては“有り得ない”話で。


 “そうゆう”関係になること時のこと想像して考えた話だけど、それはつまりあたしの勝手な妄想で……。


 根っこでは全然、そんなことになるはずなんてないんだ、と自分自身に言い聞かせていた。


 それはどうしてかと聞かれたら、




―――― “無駄な期待をしたくはないから”と答えるに違いない。




「あ。そっか。カノジョとは別れたのね」

「……違うよ」

「え?」

「祐は別れてなんかないし、あたしのことを好きでもないの!」




 期待をさせないで。


 あのキスシーンはなんだったってゆうの。


 あんな可愛いカノジョに、対抗できるわけない。


 あたしはもう、諦めたいのに。




 ……色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、自分でもなにが言いたいのか分からなかった。


 なにが本心でなにが理性なのかも分からなかった。






―― ピンポーン






 思考の渦から救い出してくれたのは、そんな音だった。


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