危険ナ香リ




 ……佐久間先生だとすぐに分かった。




 あたしを見て瞬きを繰り返していたお姉ちゃんから目を逸らして、カバンを手に取る。


 逃げたかった。


 もう、祐のことは考えたくなかった。


 駆け足で玄関までいき、急いでブーツをはいた。




「恭子っ」

「……っ」

「あ、こら!待ちなさいよあんた!」




 追いかけてきたお姉ちゃんから逃げるように、玄関のドアを開けた。




 そこには予想通り、佐久間先生が立っていた。




 ……見慣れない私服姿にビックリして、ドアを開けたまま固まってしまった。




「捕まえた!」

「わぎゃっ!」

「ったくもうあんたは……。いきなり怒ったりしていったいどう……って、誰、このイケメン」




 後ろから抱きつくようにあたしを捕まえたお姉ちゃん。


 そのおかげで佐久間先生から目が離れたあたしは、急いでじたばたと暴れた。


 でも、ジムに通ってるお姉ちゃんにはあたしの力は通じなかった。




「……誰だ」

「いや。それあたしのセリフだし」




 2人が言葉を交わした時点で、ようやく気づいた。




―――― まさかの鉢合わせをしてしまった!




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