危険ナ香リ
「っ、バカお前。その呼び方するな」
あ!そ、そうだった!
むぎゅっと頬を掴まれながら、あたしは“しまった”と思う。
外で“先生”って呼んじゃだめだったんだ!
ど、どうしよう。今の聞かれてないよね?
チラリと周りを見ると、誰もこっちを見ていないようで、安心した。
「ふ、ふいふぁへん」
「ったく……。もうその呼び方するなよ」
「ふぁい」
軽く掴まれている頬に痛みを感じ始めた時、手が離れた。
その後、佐久間先生はあたしに少しだけ顔を近づけた。
「今から“敦”って呼べ」
こっそりそう言う佐久間先生。
敦、って、佐久間先生の名前だよね?
……名前で呼べと!?
「む」
「そういえば近くにホテルがあったな」
「あう……っ」
“無理です”と言うことができなくなってしまい、口から情けない声がでた。
も、もう、どうしよーっ。
だってずっと“佐久間先生”って呼んでたのに、そんな急に無理だよっ。
「清瀬」
「う……っ。せ、せめて、名字で……」
「このままキスしてみるか」
「呼びます!呼ばせてくださいぃ!」
慌てて佐久間先生から距離をとると、笑われてしまった。
やっぱり、佐久間先生って意地悪。
なんて唇を尖らせてる暇なんかなくって。
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