危険ナ香リ




「あ、あ、あつ、あ」

「どんだけ緊張してるんだよ」

「だって」

「ほら早く。ここで突っ立ってても目立つだけだぞ」




 た、確かに、お店の前にずっと立ってるのって結構目立つ。


 こりゃ早く言わなきゃいけない。


 でも、呼び捨てだなんて……。




「あ、つ……し?」




―――― 呼び捨てにした男の人はこれで、2人目、だった。




 祐の次に、呼び捨てにしてしまった人。


 佐久間先生は、あたしを見て楽しそうに口元をあげて笑っていた。




「まあいいか。今度はハッキリ呼べよ」




 顔が熱かった。


 人混みで暑いから、とか、暖房がきいているから、とか。


 そんな言い訳が通じない熱さだった。




「で?なんでここにいたんだ?」




 あたしの顔が赤いことに触れない佐久間先生に、少しホッとした。




「え、えと、なんだか可愛いお店だなって思って……」

「それで思わず来てしまった、と」

「す、すいません」

「まあいい。次からは気をつけろよ」

「はい」




 もう、心配をかけないようにしなくっちゃ。


 そう誓うあたしだった。


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