危険ナ香リ
「それで、欲しいものは見つかった?」
そう聞いてきた佐久間先生は、あたしが今まで見ていた棚に目を向ける。
これ、あたしの欲しいもの……なのかな。
でもこれ、すごく可愛いし、なによりついつい目が向かっちゃう。
「えと、これ……かな?」
そう言って指をさした先にあるのは、懐中時計だった。
「へえ。懐中時計か。珍しいもの選ぶんだな」
「なんか、気に入っちゃったみたいで……」
佐久間先生があたしの指さした懐中時計を手にとる。
そして物珍しそうにマジマジと見るものだから、なんだか選ぶものを間違えた気分になった。
「……やっぱり、おかしい、ですか?」
「いや。全然おかしくないと思うよ」
そう言って笑う佐久間先生を見て、なんだか少しホッとした。
「それで。プレゼントはこれでいいのか?」
「はい」
「案外早く決まったな。それじゃ、会計してくるからそこらにいろよ」
「はい」
佐久間先生の背中を見送っていると、なんだか不思議なものを見ている気分になった。
佐久間先生にこうゆう可愛いお店……なんか似合わないかも。
こうゆうお店よりなら、まだ反対側にあるブランドショップの方がまだ似合いそうだなぁ。
なんて、そんなどうでもいいことを考えてから、周りを見回してみた。
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