危険ナ香リ
カップルばっかり目についてしまう。
みんな、手を繋いでいたり、隣を歩いていたりしている。
そんな人達を見ていり中、なんとなく、あたしと佐久間先生の距離を思い出してしまった。
……別に手を繋ぎたいわけじゃない。
ただ、隣にきてほしいな、とは思う。
だって、あの不安定な距離はなんだかとても不安で、少し寂しいから。
隣にいきたいな、と思う。
だけどあたしにそんな勇気はなくって……。
これが佐久間先生に指摘されたあたしの悪い癖……“守り癖”なんだなと思った。
「なにボーっとしてるんだよ」
いきなり後ろから声をかけられて、油断していたあたしは肩を跳ね上がらせた。
袋を片手に、あたしを見ている佐久間先生を見ることができずに、下を向いた。
「ん?まさか、あそこの着ぐるみが持ってる風船がほしいとか?ほしいなら自分で取りにいけよ。俺は行かないからな」
……風船って。
あたし、風船ほしがるほど子供じゃないもんっ。
ぷいっと顔を背けてみせると、佐久間先生は小さく笑った。
「冗談だよ。……ほら、誕生日プレゼントやるから機嫌直せ」
差し出されたそれをチラリと見てから、手を伸ばす。
受け取ったそれは、とても軽いものだったけれど……重さとか関係なしに、嬉しいと思った。
少し頬を緩ませた。
そしたら、頭の上に大きな手が乗っかった。
「腹減ったな。なんか食いにいくか」
その手は、佐久間先生の動きにあわせて、流れるように離れていった。
.