危険ナ香リ
……あ。
あたし今、佐久間先生の隣にいる。
「じゃあ、どうした?」
頬が緩んでしまいそうな気がして、目を伏せて手をぎゅっと握る。
……なんだか、嬉しい。
「すいません。声、かけてみたくなっただけです」
「それだけ?」
「はい」
「……ふぅん」
隣を歩けはしなかったけど、今こうして隣に座ってるから、いいや。
これだけで、なんだか満たされた気分になる。
「……清瀬」
「はい?」
「声かけたのって、本当は、寂しかったからじゃないのか?」
―――― なぜだか、そう言われてドキッとした。
悪いことをしたことがバレた時みたいに、なにか言い当てられたみたいに、あたしの胸はドキドキしていた。
……自分では気づかなかったけど……もしかして、そうなのかな。
寂しかったから、声かけちゃったのかな。
伏せていた目を持ち上げて、横目で隣を見ると、佐久間先生の横顔が見えた。
その横顔は、どうやっても笑っているようには見えない。
「いや。悪い。俺の思い違いだったかな」
「……いえ。たぶん、当たってます」
なにを思っているのか分からない、無表情に似た表情をしていたその横顔が、苦笑いに変わった時、あたしはそう口にした。
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