危険ナ香リ
時間が流れていく中で、言葉を発することはなかった。
たまに運転のために離れていく手にもどかしさを感じながら、それでもその温かさが戻ってくるとホッとして、感じていたもどかしさを忘れる。
その繰り返しだった。
時間の無駄だと、笑われるかもしれない。
教科書に載っていた“時間”についての論文を書いた作者から言えば、今、あたしは人生の中の貴重な時間を無駄にしていることは間違いなかった。
それでも、あたしは今はこうしていたい。
―――― “時間”は無駄でも、“内容”は無駄じゃないと思えば、こんなことも無駄な行為とは思えなかった。
そっと目を閉じたあたしは、胸元にぶら下がるネックレスの存在を、いつの間にか忘れていたことに気がついた。
でもそれは大したことではなくて、そのネックレスの存在をまた忘れて、ストンと眠りに落ちていった。
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