危険ナ香リ
目が覚めた時に最初に見たのは、見慣れた天井だった。
起き上がって周りを見回すと、そこはやっぱり見慣れたあたしの部屋だった。
どうして。
佐久間先生は。
なんだか1人ぼっちになってしまった気がして、急に寂しくなって部屋からでた。
リビングに向かうと、お姉ちゃんがソファーに座ってテレビとにらめっこしている姿が見えた。
「お、お姉ちゃん」
「ん?ああ。おはよ、恭子。お風呂入ってきなさい」
「佐久間先生は?」
そう聞くと、振り返ってあたしを見ていたお姉ちゃんは急に無表情になった。
「帰ったわよ」
「え?」
「起こしたくないからって言って、部屋まで行って寝かせてから帰ってったの」
「ええ!?」
さ、佐久間先生、あたしの部屋に入ったの!?
そんな、片づけしてなかったから汚いのにっ。
なんだか泣きそうになってしまうあたしに、お姉ちゃんはため息をはいて、またテレビと向かい合った。
「もういいから、早く化粧落としなさい。あと、お風呂入りなさい」
「佐久間先生、なにか言ってた!?」
「なにかって?」
「あたしの部屋が汚いとかどうとか……」
「別になにも」
よ、よかった!
いやでも、心の中では汚いと思われてたかも……。
なんだか、ひどく心配してしまう。
「……ねぇ恭子」
「ど、どうしよう。今から片づけて……あー、もう遅いよねぇ」
「いいから聞きなさい恭子」
「え?なぁに?」
「あたしは、あんたが誰を好きになっても構わないわよ」
いきなり何を言い出すんだろう。
不思議に思いながら、テレビとにらめっこするお姉ちゃんを見つめた。
「祐だろうが宇宙人だろうが犬だろうが猫だろうが同性だろうが、構わないわ」
「……え、あの、せめて犬や猫は構って。とゆうか、止めて」
「まだ6歳のガキや80歳のジジィを好きになっても構わないわ」
「……お姉ちゃ」
「だから、教師を好きになっても、構わないから」
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