危険ナ香リ
第3章
頭ガ痛イ
「ちょ、先輩、そのマンガ先輩のですか!?」
「ん。そうだけど」
「あたしそれ見たかったんです!ポッキーあげますからください!」
「あげないわよっ。貸すぐらいならいいけど」
いつもと変わらない、昼休みだった。
柚乃ちゃんと美波先輩が話をして、あたしがそれを隣で聞いて。
なにも変わりない、昼休みだった。
……柚乃ちゃんと美波先輩とあたしの関係も、なんら変わりはなかった。
あの日、柚乃ちゃん達と一緒にご飯を食べなかった日、なにがあったのかは未だに分からない。
聞く勇気がないのは確かだけど、それ以上に、その件に触れちゃいけないような気がした。
だからあたしは、こうして何事もなかったかのように、普通にしている。
柚乃ちゃん達も普通にしている。
「あれ?恭子ちゃん、ご飯もういいの?」
そう美波先輩が聞くと、自然と柚乃ちゃんの視線があたしのお弁当箱へ飛ぶ。
お弁当箱の中に入っているおかずはほとんど手付かずで、あたしが食べたのはご飯ぐらいだった。
「なんか、食欲なくて」
食べる気が起こらない。
それになんだか、吐き気がする。
もしかして、風邪かな。
「保健室に行く?あたし、ついてってあげる」
「大丈夫です」
授業はあと2時間だけだし、それに次の時間は小テストがあるし。
休みたくない。
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