危険ナ香リ
それは言い訳とかじゃなくて、ただ純粋に休みたくないだけ。
佐久間先生に会いたくないから、保健室に行かないわけじゃない。
むしろ佐久間先生には、あの日、あたしを部屋まで連れて行ってくれたお礼をしなきゃなって思ってるぐらいだ。
放課後、保健室行ってお礼でも……。いやでも、今週の保健室掃除の人に不審に思われたら嫌だしなあ。
「そう?ならいいわ。だけど無理はしないでね。もしぶっ倒れちゃったら、速攻助けにいくからね」
「でも、美波先輩って次の授業体育じゃ……」
「バスケなんてやってる場合じゃないわよ」
苦笑いしかできなかった。
でも、心配してくれていることが伝わってきて、なんだか嬉しくなった。
「大丈夫ですよ。なにかあったら、あたしがお姫様抱っこして保健室まで運びますから」
……お姫様抱っこって。
またまた苦笑いのあたしだったけど、やっぱり内心は嬉しかった。
それからはまた雑談をして、いつも通りに解散した。
変わったことは本当に特になくて、平穏無事だった。
でも、時間が過ぎていく度に、雲が暗い色に変わっていく度に、あたしの吐き気は増していった。
なぜなんだろう。
小テストを受けながら、吐き気をこらえるために深く息を吸いながら、そう思った。
昼休みからずっと窓を開けているせいかもしれない。
とても寒い。
だけど、走って遊んでいた人がいたらしく、窓際のその人暑がって窓を閉めようとしない。
それに、今はもう授業中だから“閉めて”と言うことすらできない。
……まあ、言えたとしてもたぶん勇気がなくて言ってないだろうけど。
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