危険ナ香リ




「はい。昼に食欲ないって言ってて……5時間目終わった時には、もうこんな顔色で……」

「うわ。顔真っ青……。とりあえず熱計れ」




 あたしは今、どんな顔色をしてるんだろう。


 鏡を見たい気がするが、見る余裕がない気もする。


 ソファーに座って体温計で熱を計る間に、佐久間先生は柚乃ちゃんを教室に返した。




「37.6……。よくもまあこんなになるまで頑張ったこった」




 その数字を聞いたら、さらに熱がでた気がしたのは間違いなく気のせいだ。


 吐き気と頭痛に悩まされる中、あたしは頭を押さえて下を向く。


 また深く息を吸うと、タバコのニオイがして、なぜかそのニオイを嗅ぐと吐き気が少しだけおさまった。


 気が紛れたからなのかもしれない。




「帰ったほうがいいな。今、家に家族は?」

「……誰も……」

「なら少し休んでろ。放課後になったら送ってってやるから」

「……でも……」

「お前の家の場所は知ってるから特別だよ。誰にも言うなよ。ってゆうか、さっさと寝ろ」




 “特別”なんて言葉が嬉しくて、顔が緩みそうになる。


 言われるがままにベッドに移動して、横になった。


 初めて使う、保健室のベッドは予想以上にふわふわしていた。


 ……そういえば、お礼しなくちゃ。




「先生」

「ん?」




 消臭スプレーを振りまいていた佐久間先生の声が聞こえた。


.
< 180 / 400 >

この作品をシェア

pagetop