危険ナ香リ
「はい。昼に食欲ないって言ってて……5時間目終わった時には、もうこんな顔色で……」
「うわ。顔真っ青……。とりあえず熱計れ」
あたしは今、どんな顔色をしてるんだろう。
鏡を見たい気がするが、見る余裕がない気もする。
ソファーに座って体温計で熱を計る間に、佐久間先生は柚乃ちゃんを教室に返した。
「37.6……。よくもまあこんなになるまで頑張ったこった」
その数字を聞いたら、さらに熱がでた気がしたのは間違いなく気のせいだ。
吐き気と頭痛に悩まされる中、あたしは頭を押さえて下を向く。
また深く息を吸うと、タバコのニオイがして、なぜかそのニオイを嗅ぐと吐き気が少しだけおさまった。
気が紛れたからなのかもしれない。
「帰ったほうがいいな。今、家に家族は?」
「……誰も……」
「なら少し休んでろ。放課後になったら送ってってやるから」
「……でも……」
「お前の家の場所は知ってるから特別だよ。誰にも言うなよ。ってゆうか、さっさと寝ろ」
“特別”なんて言葉が嬉しくて、顔が緩みそうになる。
言われるがままにベッドに移動して、横になった。
初めて使う、保健室のベッドは予想以上にふわふわしていた。
……そういえば、お礼しなくちゃ。
「先生」
「ん?」
消臭スプレーを振りまいていた佐久間先生の声が聞こえた。
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