危険ナ香リ


 苦笑いをしてみせるあたしだけれど、内心は嬉しくて仕方なかった。


 メールを見た時もそうだけど、やっぱり、友達に心配してもらえるって、嬉しい。




「2人してなにやってんだよ。廊下まで聞こえて……。って、清瀬?」




 たった今、教室に入ってきたのは、飛鳥くんだった。


 反射的に佐久間先生のあの意味不明の言葉を思い出す。




「風邪はもういいのかよ」

「あ、うん。おかげさまで、もうすっかりよくなりました」

「なんで敬語なんだよ」




 クスクス笑う飛鳥くんの顔を見つめることができなくて、目を逸らした。


 なんでだろう。


 この間、蹴飛ばした自意識過剰な考えが、また復活してしまった。


 もうっ。ばかばかあたしっ。そんなはずないに決まってるのに、なにばかなこと考えてるんだろ。




「そうだ。休んでる間分のノート、貸そうか?」

「え?いいの?」

「いいから言ってるんだっての」

「飛鳥くん、ありが」

「恭子にはあたしが貸したげるから!」




 え? と思うとほぼ同時に、柚乃ちゃんがあたしを引っ張ってかくまうように背中に隠した。


 ビックリして瞬きを繰り返すと、いつの間にか隣に祐がいて、難しい顔をしていた。




「……柚乃」

「飛鳥の汚い字なんか、恭子、読めないに決まってるじゃん」

「お前な」

「ほら、いこっ。恭子」

「わわっ」




 いきなり引っ張られて転びそうになりながら、柚乃ちゃんについていった。


 ……チラリと見えた柚乃ちゃんの顔が、また泣き出しそうに見えた。


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