危険ナ香リ


 そうやって考えてる間に、佐久間先生は距離を縮めてきていたらしい。

 ふわり、タバコのニオイが香った気がして、ドキッとした。




「清瀬。もう風邪治ったんだな」




 気づけばあたしの前に立って、微笑みながらそう言ってた。




「お、おかげさまで、もうすっかりよくなりまして……。あ、あと、この間はご迷惑をおかけして、本当に」

「ん。いい。気にする必要なんかない」

「……でも」

「ああゆうのに対処するのが俺の仕事だからな。だから謝る必要はないよ」




 ……あれ?


 佐久間先生が、意地悪じゃ、ない。


 な、なんでなんで。


 あたし、てっきり意地悪なこと言われるかと思ってたのに。


 戸惑うあたしを見て、佐久間先生は表情を変えないまま微笑んでいた。




「で?隣の奴は誰?」




 ……。


 あ、あれ。


 な、なんだろうなんだろう。


 佐久間先生は笑ってる。笑ってるのに。


 ……目が笑ってないように見えるのは、あたしの気のせいですか……?




「え、えと、同じクラスの、飛鳥くんです」

「飛鳥?……ああ。噂の」




 え?


 う、“噂”って、いったいどんな?


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