危険ナ香リ


 ……なにか、って。




「えっと、ごめんなさい。……なんのこと?」




 なにについての話なのか、全く分からない。


 分からないことばっかりで、もどかしさを感じるほどに、分からない。




「知らないならいい」




 チラリとあたしを見た後、そう言った飛鳥くん。


 ……なんだか、寂しすぎる。


 分からないことだらけで、あたしだけ蚊帳の外で。


 ……泣きたくなる。


 それに、ちょっとムカつく。




「……あたしだけ、仲間外れみたい……」

「は?」

「さっきの飛鳥くんと佐久間先生の会話の内容、あたし、全然分かんなかった」

「え?」




 戸惑う飛鳥くんをよそに、あたしは1人でイラついて、1人で口を尖らせる。


 面倒くさい奴だと思われてるかもしれない。


 でも、口が止まりそうにない。


 ……あたしの、悪い癖だ。




「柚乃ちゃんと美波先輩が、あたしの知らないとこで何話してたのかも知らないし」

「清瀬?」

「あたしが具合悪い時に、柚乃ちゃんと佐久間先生が何話してたのかも、分かんないし」

「おい」

「……飛鳥くんの言いたいことも、分かんないよ」




 1人でイラついて、1人で口を尖らせて、……1人でベラベラ喋るところ。


 “守り癖”に続くあたしの悪い癖だと思う。


 でも、そうゆう悪い癖って、改善しようと思って改善できるものじゃない。


 現にあたしは、口が止まらない。


.
< 199 / 400 >

この作品をシェア

pagetop