危険ナ香リ
……なにか、って。
「えっと、ごめんなさい。……なんのこと?」
なにについての話なのか、全く分からない。
分からないことばっかりで、もどかしさを感じるほどに、分からない。
「知らないならいい」
チラリとあたしを見た後、そう言った飛鳥くん。
……なんだか、寂しすぎる。
分からないことだらけで、あたしだけ蚊帳の外で。
……泣きたくなる。
それに、ちょっとムカつく。
「……あたしだけ、仲間外れみたい……」
「は?」
「さっきの飛鳥くんと佐久間先生の会話の内容、あたし、全然分かんなかった」
「え?」
戸惑う飛鳥くんをよそに、あたしは1人でイラついて、1人で口を尖らせる。
面倒くさい奴だと思われてるかもしれない。
でも、口が止まりそうにない。
……あたしの、悪い癖だ。
「柚乃ちゃんと美波先輩が、あたしの知らないとこで何話してたのかも知らないし」
「清瀬?」
「あたしが具合悪い時に、柚乃ちゃんと佐久間先生が何話してたのかも、分かんないし」
「おい」
「……飛鳥くんの言いたいことも、分かんないよ」
1人でイラついて、1人で口を尖らせて、……1人でベラベラ喋るところ。
“守り癖”に続くあたしの悪い癖だと思う。
でも、そうゆう悪い癖って、改善しようと思って改善できるものじゃない。
現にあたしは、口が止まらない。
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