危険ナ香リ


 それにあたしが気づくのとほぼ同時に、飛鳥くんは舌打ちをする。




「悪い。ちょっと待ってて」




 そう言われると、待たないわけにはいかない。


 携帯電話を取り出してそれを耳に当てる飛鳥くんから目を逸らして、意味もなく周りを見る。


 野良猫が見えた。


 特に意味もなく、野良猫を目で追いかけることにした。




 会話が聞こえる。


 まず最初に聞こえた、“美咲?”とゆう飛鳥くんの言葉から、相手は美咲ちゃんだということが理解できた。


 それを理解した後は、特に会話を聞こうともせずに、ただただ野良猫ばかりを目で追いかけていた。




「待たせて悪かった、清瀬。帰ろう」




 気がつけば、野良猫は塀を登って消え去り、飛鳥くんがそう言ってきていた。


 ……なんだか、冷めた。


 分からないことを知ろうとして、なにがあるんだろう。


 “寂しさがなくなる”


 そんな十分すぎる理由があるというのに、あたしは違う理由を探し出した。


 知ったところでなにがあるというんだろう。


 知って、それでどうなるというんだろう。


 ……どうせ、全部あたしの自己満足のために、あたしは知ろうとしているんだ。


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