危険ナ香リ




「もういいよ」

「え?」

「ごめんね、あたし、やっぱり知らなくてもいい」

「は?」

「だって、みんな、あたしに言いたくないから言わないんでしょう?」




 思えば、そうなんだ。


 みんながあたしに事情を説明しないのは、あたしに言いたくないからで。


 そしてあたしが知りたがっているのは、ただの自己満足の為で。


 ……結局は、あたしが黙っていれば、丸く収まるんだ。




「自分勝手でごめんね。もういいよ。本当にごめんね」




 不意に怖くなった。


 あんなにベラベラ喋って、今みたいに1人で勝手に終わらせて。


 気分を害さないわけない。


 もしかしたら、飛鳥くんに嫌われちゃうかもしれない。


 ううん。


 ……嫌われちゃってるかも、しれない。




「ごめんなさい」

「……」

「……ごめんなさい」




 黙っていられると、余計に怖くなる。


 ぎゅっときつくカバンの持ち手を握ると同時に、泣きたくなった。


 ……ああ、もう嫌われちゃったんだろうなぁ。




「ごめ」

「時間ある?」




 ……え?




「俺が知る限りでいいなら、全部話すから」




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