危険ナ香リ


 祐が息をのんだことが、感じ取れる雰囲気だけでよく分かった。


 ……ああ、そっか。祐は知ってるんだ。


 そう思って、余計に泣きたくなった。




「え、な、なに言ってんだよ。今そんなの関係な」

「柚乃ちゃんの好きな人って、飛鳥くんなんでしょ?」




 だって、飛鳥くんがそう言ってた。


 ……今、あたしの中では、飛鳥くんの言葉はすべて信じていた。


 嘘なわけがない。


 根拠はないけれど、そう確信していた。


 驚いた顔をしている祐を見て、あたしは“やっぱりそうなんだ”と思った。




「……どうして、柚乃ちゃんはあたしに教えてくれなかったのかな……」




 ……飛鳥くんは柚乃ちゃんに告白されたから、柚乃ちゃんの気持ちを知っている。


 祐は、柚乃ちゃんから聞いたに違いない。


 だって飛鳥くん、言ってたもん。




 “そうゆう、好きとかどうとかってゆう人の気持ちって、軽々しく言うのもどうかと思うけど……”


 “清瀬に泣かれるよりなら、マシだ”


 “誰にも言うなよ。言えば、傷つくのは柚乃だから”




 あたしの中で、飛鳥くんの言葉は絶対だ。


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