危険ナ香リ
「その時、美咲ちゃんは体育で手を痛めてて……。だけど保健室に行かないで放置して」
「え?ちょ」
「……手繋がれた時、痛かったけど、祐と手を繋いでるから、ガマンして笑ってたんだって」
「な、なんでその話」
「でも祐は気づいたんでしょ?だから、反対側に回ってもう片方の手握ってあげたんでしょ?」
祐の反応を見ると、この話が嘘じゃないことがわかる。
少し顔を赤くした祐の姿を見て、あたしは、無理矢理笑ってみせた。
「……あたしが見たのは手を繋いでる後ろ姿だけ。だけど、今の話は飛鳥くんから聞いたの」
飛鳥くんからそんな話を聞いて、あたしは自然といつか見た2人が手を繋いだ時のシーンを思い出した。
祐が反対側に回ってて、どうしたのかなって不思議に思ったのを、今でも覚えてる。
「美咲ちゃん、すごく嬉しかったって」
「は、恥ずかし」
「ますます好きになったんだって」
「……っ」
「……祐は、美咲ちゃんのこと、どれくらい好き?」
あたしは、バカだ。
こんな質問、自分で自分の傷口をえぐっているようなものだ。
……でも、聞かずにはいられない。
“……さっき電話で、美咲が言ってたんだ。言っていいのか分かんねぇけど、言いたい”
「言って」
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