危険ナ香リ

　祐が顔を赤くして、視線を逸らした。


　それと同時に頭の上に乗っかっていた手が消えた。




　“あたし、今、祐先輩にね”




「……っ。だ、」




―――― “『誰よりも好きだよ』って、言われたの”




「誰よりも……一番、好き」




　顔を赤らめて、恥ずかしそうにそう言った祐を見て、あたしは目を細めた。


　……祐の口から聞いて、ようやく、理解しようと思った。






―――― 祐と美咲ちゃんの間に、立ち入る隙はないんだってこと。






　分かってた。


　分かってたけど。


　……分かりたくなかった。


　飛鳥くんから聞いた、そんな話も、理解したくなかった。


　でもあたしは“分かった”から、その話を耳から引き派がしたくても剥がせなくて。


　……ずっと、泣きそうになっていた。


　ずっとずっと、泣きたくて仕方がなかった。




　今だってそうだ。




　胸が痛くて、苦しい。


　泣きたくて泣きたくて仕方がない。


　……だけどあたしは泣かなかった。


　無理矢理、笑った。






「……うん。そう言うと思ってたよ……」






―――― もう、諦めよう。





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