危険ナ香リ
佐久間先生がいい。
佐久間先生のニオイがいい。
……佐久間先生に、会いたい。
「……恭子……」
ボロボロ涙を零して必死で耳を押さえるあたしに気づいて、祐の腕の力が弱まった。
逃げ出してしまいたいと思った。
だけど、立ち上がる暇さえないほどに、あたしは泣き続けた。
……苦しい。
1人で楽になろうとしている祐が、あたしの頭に手を乗せてきた。
瞬間、振り払いたい衝動に駆られる。
「……きらい」
触れたところから、苛立ちが溢れてくるようだった。
「祐なんか、大っ嫌い!!」
なんの迷いもなく、その一言を言い放った。
そして、あの時、祐があたしの家に来ると言った時、断ればよかった、と心底思った。
断ってさえいれば、せめて、泣かずにすんだかもしれないのに。
……せめて、穏やかに諦めることができただろうに。
“きらい”と言ったその瞬間、あたしの中で、祐への恋心は弾け飛ぶように消え去った。
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