危険ナ香リ
「変態なんて失礼だな。ただ触っただけだろ」
「あんたは頭のてっぺんから足の先から指先一本まで変態だから、油断できないわ」
「……俺はどんだけ変態なんだよ」
手を伸ばせば、佐久間先生に届くかな。
そう思うだけで手を伸ばさないあたしは、出されたお茶に視線を落とす。
立ち上がる湯気に引かれるように湯飲みを持ち上げてお茶を飲み込む。
温かさがじわりと染み込んで、溜め込んでいた重い気持ちを息として吐き出した。
「ってか、敦邪魔!あっち行って!」
え。
「人に茶入れさせといて……。そんな性格だから長続きしないんだ」
「ほっといてよっ!」
佐久間先生はため息をひとつ吐き出して、それから言うとおりにしようと動き出した。
―――― やだ。
そう思った瞬間に、離れていく佐久間先生の腕を掴んだ。
立ち上がって、少し前のめりになりながら腕を掴んだ。
当然、美波先輩と佐久間先生は驚いた顔をあたしに向けた。
そんな中で、あたしは佐久間先生を涙目で見つめる。
「い、いかないでください……っ」
少し、声が震えていた気がする。
佐久間先生は不思議そうな顔をしていた。
「……どうした?なにがあった?」
ふわりと落ちてきた声は、とても柔らかく、優しいものだった。
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