危険ナ香リ
あたしは、しっかり佐久間先生の腕を掴む。
なんて言えばいいんだろうと、また考えてみた。
だけどやっぱり思い浮かばない。
……だから、
「……先生、は」
「ん?」
「柚乃ちゃんが飛鳥くんのことが好きだって、いつから知ってたんですか?」
話を変えた。
でも、その話に食いついてきたのは、佐久間先生ではなく、美波先輩だった。
「え?なんで知ってんの?」
「美波先輩も、やっぱり知ってたんですね」
ああ、やっぱりあたしだけ、仲間外れ。
悲しくてしょうがないあたしは、美波先輩に眉を寄せながら視線を向けた。
「……恭子ちゃん、柚乃はね」
「あたし、もしかして柚乃ちゃんに嫌われてるんですか?」
「……え?」
一度口からそんな疑問が飛び出してしまうと、火がついたように止まれなくなる。
「だって、祐も知ってんですよ。佐久間先生だって、きっと知ってるんだろうし……」
「……」
「あたしだけ、知らなくて……。柚乃ちゃんに嫌われてるとしか、思えません」
黙る佐久間先生と、何かを言おうとしているけど言えないでいる美波先輩。
両方を見てから、あたしは唇を噛んだ。
すると、佐久間先生があたしの手に自分の手を重ねてきた。
「嫌いな奴と一緒に飯食う奴はいないだろ?」
そう言った佐久間先生は、微かに笑みを貼り付けていた。
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