危険ナ香リ


 抱きついてしまいたかった。


 だけど、美波先輩がいるから、なんて理由であたしの理性がそれを止める。


 もどかしい思いを抱えながら、佐久間先生の腕をぎゅっと握った。




「……本当に、どうしたんだよ」




 色々、あった。


 飛鳥くんのことや柚乃ちゃんのことや……祐のことで。




「なにか嫌なことでもあったか?もしかして、安藤か?なにかされたのか?」

「……っ」

「全部話してみろよ。大丈夫。誰にも言わないから」




 そう言って、ちゃんと聞く体制をとってくれた佐久間先生。


 それが嬉しくて、あたしは言いづらくて言えなかったことを全部話そうと思えた。


 ……タバコのニオイを感じた後、大きな手があたしの頭の上にのる。


 撫でるその手の感触に、とても安心できた。




「……っ、あたし、祐に、ふられ、て……」




 ピクリと頭の上にある手が動いた気がした。




「なのに、祐、変なこと、言おうとして……っ」




 途切れ途切れで、それでもちゃんと全部話そうって思って、一生懸命声を出す。


 その間、あたしは喋ることに必死で、佐久間先生の表情はうまく覚えていかなかった。


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