危険ナ香リ
話し終わったあと、美波先輩にテーブルの上にあるすっかり冷めたお茶を差し出された。
だいぶ涙も止まってきて、のどが乾いたと感じられるようになってきた頃だったから、ありがたく受け取った。
「……色々あったね」
ポツリと美波先輩が呟いた言葉に、思わずうなずきたくなる。
すると、美波先輩はチラリと佐久間先生を見た気がした。
「他はどう思ったか知らないけど……あたしは、ちょっとだけ恭子ちゃんのこと叱りたいな」
「……え?」
「確かに祐は悪い奴だね。恭子ちゃんの気持ちを考えない、悪い奴」
「……はい」
「でも、少なからず自分に好意を持ってる相手に向かって“大嫌い”なんて言っちゃだめよ」
諭されているような気分だった。
優しく、それでもどこかしっかりした口調で。
その口調のおかげで、あたしの中の罪悪感がうずき出した。
「それを言った恭子ちゃんも悪い奴だわ」
「……っ」
「それに、本心じゃなかったんでしょ?」
……見透かされてる、と思った。
唇を噛んでうつむいて、じわじわと這い上がる罪悪感から堪える。
よく思い出せない、祐の後ろ姿を、ぼんやりと頭に浮かべた。
「ちゃんと謝りなさいよ」
謝らなきゃ、と思った。
祐にちゃんと謝らなきゃ。
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