危険ナ香リ
「なんか大人しいな。こっちの方が話しやすいから、このままで話すぞ」
……先生、あたし、今息止めてます……。
「あのな、ただ俺の家に来てくれればいいだけなんだ」
あたしが息を止めていることに気づかない佐々間先生は、あたしを引っ張りながら歩き出した。
ドアが近いから、外に声が漏れると思ったんだろうか。
そんな憶測をしているうちに、佐々間先生はソファーに座り、あたしをその隣に無理矢理座らせた。
「……むっ」
い、息が……!!
「アホ。息ぐらい吸え」
「ぶはっ」
あたしの反応を見て、息をしていなかったことにようやく気づいた佐々間先生は笑いながら手を離してくれた。
肩で息をして必死になって酸素を吸い込んでいると、佐久間先生はまた口をふさいできた。
お、鬼だこの人!
楽しそうに笑っている佐久間先生を見て、あたしは佐久間先生を憎まずにはいられない、と思った。
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